2006年 11月 18日
Bricolage
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アパルトマンから徒歩10分、ポンピドウ・センターのすぐ脇に、Leroy Meulinという比較的新しい日曜大工センターがある。
敬愛するブランクーシのアトリエの真向い。台所用品から園芸物、各種材料や道具など、モノによってはBHVより品そろえが豊富で安い。これがとってもありがたい。材料・道具の調達先が散歩の範囲内に存在するのだ。パンを買って帰るように、車も交通費も使わずに材料・道具を買って帰れる。この点こそ、いかに風紀が悪くても、僕にとってはサンドニ通りに住むメリットだ。
なぜ大都市のど真ん中に大きな材料店があるかというと、フランス人は昔も今もブリコラージュ(bricolage)が大好きだからだ。「ブリコラージュ」というと一昨年大阪の民博であった展覧会を思い出すが、あそこには人類学者のレヴィ=ストロースがこの語にチャージした特殊な哲学的人類学的意味合いがこめられていた。
しかし、フランス語の"bricolage"はもっと日常的・散文的な意味でごく普通の手仕事(ものづくりや修繕)を指す。文字通り、手仕事マニア(ブリコラマ Bricorama)という名の同じ種類の店も大繁盛だ。日本にも日曜大工センターは各地にあるが、全般的に日本人の手仕事感覚はフランスより薄れている。だからじつは当たり前のことなのに、ブリコラージュを特殊視する。
僕は、子供の頃、「かさ〜しゅうぜ〜ん」と言って家にやってきた黒い服の傘の修繕師のおじさんが大好きだった。ほんとに傘が化けたような感じだった。いつのまにかそういう職業は消えてしまった。今の日本はメーカーと消費者だけの天国。
きっと忘れると思うので、部屋の備品をメモしておく。これは、"Clic-clac"とオノマトペで呼ばれる折り畳み式ベッド兼ソファ。備え付けて合った。かなり使い込まれている。クッションの下からベッド部分を引き出して広げる。
この上にモンベルの寝袋で眠る。
アトリエの設備といっても一年足らずで引き上げるので、かさ張る高価な品物は買わない。まず脚台 treteau(4.9€)と合板ボードcontre-plaqué(27€)を買ってきて作業台を組み立てる。軽いので移送も楽にできた。椅子は、天井に手を入れるためにどうしても必要な脚立 escabot(9€)を利用してつくる。
安いホワイトボード(800x400で2.99€)を切って、脚立に万力(étaux)で固定して椅子の座板にする。座布団は3€。集成材のボードは、合板などよりぐっと安い。
同じボードでキッチンのまな板をつくる。脇の調理台もいたんでいたので、同じボードでカバー。電気レンジ cuisinière electrique のスイッチは時計回りで強6→弱1。流し évierの上には、風呂用にも使う80リットルの給湯タンク がある。
残ったホワイトボードの幅が、壁の幅木と同じだったので、うれしくなってレーニンとスターリンのためのコンストラクションを即興でつくる。環境とつながった造形が研究課題。
鏡がほしかったが、結構値が張る。アパルトマンの中庭に洗面ケースが捨ててあるのをみつけ、分解して鏡をとり出す。50x43cmと比較的大きく、傷や汚れは少ない。とても得した気分。学生時代に戻った感じ。
小ぎれいで衛生的な日本の大都会は、僕ら貧乏人や美術家にとっては物を拾うことさえむずかしい砂漠。
逆に、パリがいいのは、道端や中庭の片隅にさまざまな物品がたくさん捨てられている(=回収されるべく待っている)こと、
敬愛するブランクーシのアトリエの真向い。台所用品から園芸物、各種材料や道具など、モノによってはBHVより品そろえが豊富で安い。これがとってもありがたい。材料・道具の調達先が散歩の範囲内に存在するのだ。パンを買って帰るように、車も交通費も使わずに材料・道具を買って帰れる。この点こそ、いかに風紀が悪くても、僕にとってはサンドニ通りに住むメリットだ。
なぜ大都市のど真ん中に大きな材料店があるかというと、フランス人は昔も今もブリコラージュ(bricolage)が大好きだからだ。「ブリコラージュ」というと一昨年大阪の民博であった展覧会を思い出すが、あそこには人類学者のレヴィ=ストロースがこの語にチャージした特殊な哲学的人類学的意味合いがこめられていた。
しかし、フランス語の"bricolage"はもっと日常的・散文的な意味でごく普通の手仕事(ものづくりや修繕)を指す。文字通り、手仕事マニア(ブリコラマ Bricorama)という名の同じ種類の店も大繁盛だ。日本にも日曜大工センターは各地にあるが、全般的に日本人の手仕事感覚はフランスより薄れている。だからじつは当たり前のことなのに、ブリコラージュを特殊視する。
僕は、子供の頃、「かさ〜しゅうぜ〜ん」と言って家にやってきた黒い服の傘の修繕師のおじさんが大好きだった。ほんとに傘が化けたような感じだった。いつのまにかそういう職業は消えてしまった。今の日本はメーカーと消費者だけの天国。
きっと忘れると思うので、部屋の備品をメモしておく。これは、"Clic-clac"とオノマトペで呼ばれる折り畳み式ベッド兼ソファ。備え付けて合った。かなり使い込まれている。クッションの下からベッド部分を引き出して広げる。
この上にモンベルの寝袋で眠る。
アトリエの設備といっても一年足らずで引き上げるので、かさ張る高価な品物は買わない。まず脚台 treteau(4.9€)と合板ボードcontre-plaqué(27€)を買ってきて作業台を組み立てる。軽いので移送も楽にできた。椅子は、天井に手を入れるためにどうしても必要な脚立 escabot(9€)を利用してつくる。
安いホワイトボード(800x400で2.99€)を切って、脚立に万力(étaux)で固定して椅子の座板にする。座布団は3€。集成材のボードは、合板などよりぐっと安い。
同じボードでキッチンのまな板をつくる。脇の調理台もいたんでいたので、同じボードでカバー。電気レンジ cuisinière electrique のスイッチは時計回りで強6→弱1。流し évierの上には、風呂用にも使う80リットルの給湯タンク がある。
残ったホワイトボードの幅が、壁の幅木と同じだったので、うれしくなってレーニンとスターリンのためのコンストラクションを即興でつくる。環境とつながった造形が研究課題。
鏡がほしかったが、結構値が張る。アパルトマンの中庭に洗面ケースが捨ててあるのをみつけ、分解して鏡をとり出す。50x43cmと比較的大きく、傷や汚れは少ない。とても得した気分。学生時代に戻った感じ。
小ぎれいで衛生的な日本の大都会は、僕ら貧乏人や美術家にとっては物を拾うことさえむずかしい砂漠。
逆に、パリがいいのは、道端や中庭の片隅にさまざまな物品がたくさん捨てられている(=回収されるべく待っている)こと、
つまり肥沃な土地であることだ(芸大の中みたい)。
蓑虫のように、なんとか道具・材料を身の回りに集め、どうにかこうにか生きていけること。それが大事。
蓑虫のように、なんとか道具・材料を身の回りに集め、どうにかこうにか生きていけること。それが大事。
金さえ出せばなんでも買える消費天国・日本の環境は、じつは大事な部分がやせこけていると思う。
by peuleu
| 2006-11-18 21:19
| 自己試作