2007年 03月 15日
Mon père est disparu
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父が死んだ。
訃報を受取ったのは3月9日朝8時すぎ(日本時間16時すぎ)。急いで航空券を手配し、CDG空港1325発の飛行機で日本に発つ。
日本時間で3月10日(土)9時に関空着。10時すぎ実家の大阪市東住吉区中野着。昼すぎ、遺体を引き取りに東住吉警察署に出向く。一人暮らしだったため発見がおくれ、検死にまわされたということだった。
推定死亡時刻は8日午前0時ごろ。36時間近く、父はベッドにつっぷしていたことになる。発見時は死後硬直の最終段階だったと思われる。(死後硬直は、通常死後2時間程度経過してから徐々に顎や首から始まり、半日程度で全身に及ぶ。30時間から40時間程度で酵素により徐々に硬直は解け始め、90時間後には完全に解ける。)
写真は、1997年に僕が隣町の平野で行った『瞬間移動』というプロジェクトを見に来たときの父。これは、暴走族の落書きを鉛筆で実物大模写したパネルを、町のお年寄りたちといっしょに、空き地から空き地へと記念撮影してまわるというプロジェクトだった。一人暮らしで消えていく老人と町の風景の変化をテーマにしていた。
当時の制作メモにこうあった。
いっしょに記念撮影しませんか?
あなたが消えてしまう前に。
ここではないどこかへ。
どこでもないどこかへ。
95年に母が亡くなり、父はその後12年間、不整脈と癲癇を抱えながら、中野の長屋で気ままな独居を楽しんでいた。八尾の旋盤工場で働く機械職人だった父は、美術の道に進んだ息子のやっていることを理解しなかったが、このときはわざわざ現場にやってきて、何か機嫌がよかったことを覚えている。
その父が本当に瞬間移動でこの世から消えてしまった。遺影にはこの写真の父を使った。
僕は長男なので、法要や実家の処分などやらないといけないことがいっぱいあり、4月10日すぎまでパリならぬオーサカ一人暮らしとなる。だれしも味わう家と家族の消滅とやらをじっくり味わうことにしよう。
井上美明(いのうえよしあき):1924年7月11日〜2007年3月8日
by peuleu
| 2007-03-15 05:04
| 現世観察